サキシトキシン(麻痺性貝毒)

自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之

サキシトキシン(麻痺性貝毒)

概要

サキシトキシンは麻痺性貝毒と呼ばれ、ネオサキシトキシン、ゴニオトキシン群とともに赤潮の原因である渦鞭毛藻が産生する毒素で、マガキ、ホタテガイ、ムラサキイガイ、アサリなど、主に二枚貝がこれを摂食し体内に蓄積し毒化する(※21)。フグ毒のテトロドトキシンに構造が似ており、毒性発現機序は同じである。この毒素は、細胞膜のNaチャンネルに付着しNa の細胞内への流入を妨げ、興奮の伝達を妨げ中毒症状を呈する。米国陸軍は1969年まで、サキシトキシンを産生する原生生物Alexandrium catenellaの培養に成功し、この毒素を大量に製造・保持していた(※22)

症状

症状は、口唇の知覚麻痺と四肢の弛緩性麻痺が特徴的である。食後30分〜1時間後に、口唇・両手足のしびれ感、ピリピリ感が始まり四肢の弛緩性麻痺がみられ、2時間後には呼吸麻痺にいたる。この呼吸麻痺の原因は、末梢神経麻痺と呼吸中枢の抑制が考えられる。痛覚刺激に対する反応はないが、意識や血圧は保たれている。テトロドトキシンに比べ、嘔吐、血圧低下は軽度で持続時間は短いが、麻痺作用はやや強い。

治療

死因は呼吸麻痺で経過が早いが、回復後は後遺症を残さない。人工呼吸が全てで、迅速で適切な呼吸管理が行なわれば、24時間後には呼吸は回復し四肢麻痺も5日目には消失する